一句佳日 

一日一句、シンプルに「俳句」を鑑賞して頂くだけのブログです。
その日の自作の一句と、「お気に入りの句」を併載しています。

写真は一部以外、Webから拝借しています。

秋の日


秋の日の点滴の孔があをい
 
字足らず、自由律の句である。普段は有季定形にこだわって、
自由律も無季俳句も詠むことはないが、山頭火や放哉の句を
読むと惹かれるものがある。この句を採っていただいた方は
「点滴の孔をみつめたことはありませんが、すすみ行く秋の
なかで孔を「あをい」と感じる作者の不安が際立ちます。」
と、講評された。
後にして思えば破調の俳句ゆえに、講評者の言う「不安」が
強調され、表現できたのかもしれない・・
 
咳をしても一人   尾崎放哉


唐辛子


唐辛子刻みし指の火宅めく

昨日より今日の淋しさ唐辛子

下の句は定型だが口語自由詩の先駆的詩人、萩原朔太郎の句だ。
「薮蔭の「唐辛子」は詩人自身の境遇を暗示しており、真紅の
唐辛子には程遠い弱々しげな色彩の「我」には、もはや蔦も
からまないのである。実際、晩年の朔太郎は家にこもりきりと
なり、激しい人間嫌い、世間から孤絶していたようだ。」
詩人清水哲男さんが書いている句評の一部だ。写生に見える句
だが、五七五に自身を詠み込む作者も、境遇や作品を知っての
うえでのことではあろうが、読み手も凄いと思う。
 
薮蔭や蔦もからまぬ唐辛子   萩原朔太郎


鉦叩




おそらくは僕の前世は鉦叩


「鉦叩(かねたたき)」は体長1センチほどのコオロギ科の
虫で、チンチンチンと鉦を叩くように鳴く。目につくことは
あまりないが、俳句に詠まれることは多く、例句もたくさん
ある。その単音で美しい音に加えて、人によっては鳴き声が
「命が惜しい、命が惜しい」と聞こえることなども、興味を
呼ぶかもしれない・・ 
 
暁は宵よりさびし鉦叩    星野立子
 

初秋


初秋や水に戻れる水の音

「初秋(はつあき)」、何とも響きのいいキレイな季語だ。
歳時記の解説によると日中はまだまだ暑い。しかし朝夕に吹く
風に秋の気配が少しずつ濃くなり、空の色も微妙に変わりつつ
あるときである。ゆっくり、しかし確実に季節が移ってゆく
ことを、実感させられる季語とある。
傍題には「新秋」「秋浅し」「秋初め」「秋口」などがある。


もの音は一個にひとつ秋はじめ      藤田湘子 


秋の雨


何ゆえの椅子の不揃ひ秋の雨

「椅子の不揃いの原因を問いかけながら、椅子のことだけ
ではなく、その場に不在の人たちのあいだで起きたドラマを
想像させる一句。秋の雨という季語の印象からは、悲劇では
ないと思いたいのですがいかがでしょうか?」 揚句への句評。
ある施設に、様々なアンティークチェアが置かれ雨に濡れて
いた。どういう人が座っていたものか、なぜここにあるのか、
不思議な光景であった。
 
秋霖や何枚もある診察券   岩渕真智子